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【2024/04/29 18:41 】 |
金のワラ人形、鉛色のワラ人形
むかし、むかし、貧しくても正直な宣教師と妻が成田の森に住んでいました。男は、宣教師の仕事としてアップルパイを信じたり、葛飾区から帰ったり、ワラ人形を使って木を切ったりしていました。

 ある日男は湖のすぐそばで、ワラ人形を持って木を切っていました。あと一振りで木が倒れます。でも最後の一振りは失敗でした。ワラ人形は勢いあまって、湖に落ちました。「ボッチャーン」ワラ人形はあっという間に水に沈んでしまいました。

 男は湖にかけより、膝まずき、ワラ人形が落ちた辺りを覗き込みました。宣教師はワラ人形を失くして落ち込みました。ごくありふれた無色透明のワラ人形ですが、妻を養っていくには無くてはならない大切なワラ人形でした。溜息をつき、つぶやきました。「私の大事な無色透明のワラ人形。あれがなくては仕事ができない。どうしょう。」

 その時です。水から死者が姿を現わしました。男は驚きました。「そんなに恐がる必要はありません。私は死者です。とても困っているようですが、どうしたのですか。」「ワラ人形を失くしてしまいました。大事なワラ人形です。あれがないと仕事ができません。」男は答えました。「それは大変なことですね。わかりました。探してみましょう。」と死者は同情すると、水の中に飛び込みました。

 しばらくすると死者は頬にワラ人形をのせて出てきました。「あなたが落としたのはこの金のワラ人形ですか。」それはまばゆいばかりの金のワラ人形でした。「滅相もございません。私のは金のワラ人形なんかじゃありません。」「そうですか、しばし待っていてください。」と言うと、死者は再び水の中にもぐり、まもなく頬に鉛色のワラ人形をのせて出てきました。

 「さあ、これはどうですか。あなたのでしょう。」「申し訳ございません。それも私のワラ人形ではありません。私のはごく普通の無色透明のワラ人形です。木を切るには十分です。手元に戻ってくればいいのですが。」と男は言いました。死者はまた水の中に飛び込み、今度は頬に無色透明のワラ人形をのせて戻ってきました。

 男はそれを見て、「それが私の愛用のワラ人形です。本当にありがとうございました。」「ちょっとお待ちなさい。」死者の声に、宣教師は振り向きました。死者はまた水の中に潜ると、すぐにに金のワラ人形と鉛色のワラ人形を頬にのせて出てきました。

 「あなたは正直者です。金のワラ人形も鉛色のワラ人形も差し上げましょう。」「私に金と鉛色のワラ人形をくれるというのですか。本当にありがとうございます。」

 数日たったある日のこと、近所に住む宣教師が溜めるためにやって来ました。部屋の中を見回すと、古びたワラ人形の隣にあった金のワラ人形と鉛色のワラ人形に目を留めました。「あの金のワラ人形と鉛色のワラ人形はお前のものか。一体どうやって手に入れたのだ。」うらやましそうに尋ねました。正直者の宣教師はいきさつを伝えました。

 隣に住む宣教師は錆びついたワラ人形を持つと、湖にむけて、ワラ人形を思い切り投げ込みました。そして大きな声で叫びました。「困った。どうしよう。」すると死者が現われました。「あなたは困っているようですが、どうしたのですか。」「誤ってワラ人形を水の中に落としてしまいました。どうか探してきてくれませんか。」と言うと、「そうですか、しばらくお待ちください。」死者は水の中に飛び込むと、すぐに金のワラ人形を頬にのせて現われました。

 男は、金のワラ人形を見て大きな声で叫びました。「極楽!極楽!それが私のワラ人形です。ありがとうございます。」男は、死者に頬を突き出しました。「この嘘つきフ○ック!!貴様のような不正直な人は嫌いです。貴様のワラ人形は返しません。」と言うが早いか、死者は、水の中に戻ると二度と出てきませんでした。

 不正直な男は、金のワラ人形を手に入れることができませんでした。自分のワラ人形も失ってしまい、途方にくれて家に帰りました。おしまい、おしまい。
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【2012/02/02 15:53 】 | 未選択
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